念風鬼6「こちらが姫様のお部屋でございます。」女房は簾をあけて、姫の部屋に葛葉と頼光と牛車を止めてきてから葛葉の後をついてきた、式神の炎を中に入れた。 葛葉は部屋に入った瞬間うっと口を押さえた。 倒れそうになって頼光に寄り掛かる。 葛葉を頼光は押さえて心配そうにいう。 「どうかしたのか…葛葉?顔色がわるいぞ…」 「だって…あれ…」 葛葉が指で示した方向には姫が苦しそうに眠っている。 姫の周りには鬼を封じる護符が五芒星の位置に置かれた御幣とともにはられ、頭もとに祭壇が用意されていた。 昨日父晴明が行った封印と準備だった。 「すごいな…やっぱり晴明様だな」 と頼光は感心したが、本当はちがうのだ。 葛葉が示したのは頼光のには見えないもの。 「部屋中に…ち…血が飛び散っているの…」 姫の部屋は大量の真っ赤な血が壁という壁に激しく飛び散った感じに付いている。 この血は殺してきた男達の魂の呪縛。 「え!?」 「頼光には見えないわ…」 「みえるぞ!うん!こわいな!うわあー」 頼光は嘘をつく。葛葉と同じ物をみたいから。 なぜか頼光はこんな時にも意地になる。 そんな頼光の様子に葛葉は苦笑した。 「もう大丈夫、ありがとうね頼光」 葛葉は気を再び引き締めたがなかなかこの無気味な感じはとれない。 鬼の気配がビンビンと感じる。 こんなに近くに、しかも頼光と2人だけで鬼退治をするのは初めてである。 祭壇の前で葛葉は祈祷を始める。祝詞を唱え姫に憑いているモノを剥がすための呪を唱える。 姫は身悶えし苦しそうに唸る。 だが憑いているモノは中々出ていかない。 父から受け継いだ能力と教わった呪文は間違っていない。 だけど、自分には無理なのではないだろうかと思いはじめた。 父は葛葉にもできる仕事だといったが、本当にこれを一人で(頼光をいれて二人になるが)できるのだろうか? 「私一人じゃこころぼそいな…やっぱり…」 いつにもなく弱音を吐く、葛葉の肩をぽんぽんと炎がたたいた。 「僕のこと忘れていない?」 「炎?」 父の式神はそれは役に立つだろう。と思ったがちがう。炎は首をふる。 「違うよ、光栄だ。」 「え!?」 葛葉は驚いた。 「炎に魂を移した。葛葉一人じゃないよ。安心しなさい。葛葉を守ってあげるから。」 葛葉はとっても驚いた。声も懐かしい許嫁の声だ。姿形は違うが炎から感じる気配は光栄のものだった。 光栄のいる播磨では同じく祭壇が置かれていた。葛葉がいる宮姫が結界にいるように播磨の邸では結界の中にいるのは中将だった。 中将はぶつぶつと、文句をいっている。 三流陰陽師だの、大臣になったら二度と京に帰れないようにしてやるとかいっているが、光栄は氷に手を当てたまま動かないのを良いことに文句をいっているのだ。 それは、光栄に届いているのだが… 京の宮姫の邸でも頼光が炎の光栄に文句を言った。 「あのなー葛葉を守るのは、この俺、源頼光さまだ!播磨にいるお前に何ができるんだ!」 炎の襟元を掴み掛かりながらいう。 頼光は葛葉に喋っているのは今朝がた盗み見た、電話みたいなものだと思っている。 だが違った。 「頼光君も守ってあげるからねー」 と自分より背の引くい炎の式神の光栄に頭を撫でられた。 頼光は光栄を殴ろうと思った時、尋常じゃない気配を感じた。 「ハリマ…ハリマ…アノ男ガイル播磨…」 血を這うような無気味な声を出したのは結界なかで寝ている姫のものだった。 姫は手も使わずにぐわっと上身を起こす。 そしてその背後からは邸の外で見た禍々しい気が流れ出ていた。 ジャンル別一覧
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